インド日記 日本〜ニューデリー初日
その日の目覚めは最悪だった。
出発前日、壮行会いう名の飲み会を開いてもらった。プレゼントという名のやたらデカイシャア専用ザクをもらった。意外にうれしい
だが、インドには到底もって行ける筈が無い。
徹夜で作ろうかとも思ったが、帰国してから作る楽しみにし、友人に預ける
ああ、日本に帰ってきて僕はシャア専用ザクを作ることが出来るのだろうか?
そんなことを考えてみた。不毛だな
二次会で、駒込のワタミに行った。
僕は、重いバックパックとワンショルダーのバックを担いで。
ああ、これでしばらくはビールともお別れだなって、いっぱい飲んだ。
最後のビールはとても美味しかった。
さあ、時間は午前3時。僕と、3人の仲間。2人は仕事で疲れていたのだろう
深い夢の世界に入っていった。僕と、友人は、くだらない話で山手線の始発までの時間を浪費した
始発が始まる時間。僕らは駒込のワタミを後にした。やけに、寒い2月の朝。こんな朝ともしばらくはお別れだって、柄にも無く感傷的になった朝だった。
僕と友人は漫画喫茶へ向かった。僕の飛行機は、12時成田発だった。時間を浪費するためと、わずかな睡眠を貪る為に、無駄なお金を浪費した。
朝8時。無駄に疲れた体と、気だるい脳を漫画喫茶のシャワーは目覚めさせてはくれなかった。結果的に熱いシャワーを浴びることは、これが最後になってしまう結果になった。
日暮里から乗った京成スカイライナーは、僕の心をワクワクとはさせてはくれなかった。
たぶん、インドに対して恐れていたんだと思う。ちっともワクワクしない京成スカイライナーの車内で、僕は太陽と町並みを見ながら、ああ明日にはこの景色は遥か彼方になってしまうんだなってやけに感傷的になる。
きっと、彼女も旅行者だろう。パックパックとドコモのレンタル携帯。後で気づいたんだが、彼女もインドに居た。シンクロニシティーだろうか?なぜか、彼女は鼻血を出していた。
もしかしたら、インドに興奮していたんだろうか?そんなことは、僕の知る由ではなかった。
成田空港。きっと僕は初めて来た。だって、初海外旅行だからね。なんか、緊張するな。友人二人から、激励の電話。目頭が熱くなった。
デューティーフリーショップで、ウイスキー響の小瓶を買いエアインディアに乗る。
サリーを着たアテンダントは、日本のそれとは違っておばちゃんだった。
おばあさんに近いかもしれない。機内はインドの匂いがした。機内のキャビンは白いガムテープで止められていた。あぁ、僕は日本に帰ってこられるかどうかが不安になった。
くそ、インドに早くもやられてる気がした。ああ、インド人アテンダントがココナッツのスプレーを振りまいている。ああ、インド。どうなっているインド。くそ、僕はインドにいくんだろうか?やれやれ、ああ、くそ早くも空の上だ
機内食はインド食だった。くそ、辛いっちゅーねん!ぼくは、すでにインドで1ヶ月暮せる自身が早くもなくなった。機内で、第一関門の入国審査の予習をし、一人でのロールプレイング。後ろの女子大生二人組みがうらやましかった。彼女たちは、きっと英語なんてペラペラに違いない。女子大生二人組みは、日本の旅行のそれに似た楽しげな
会話を繰り広げていた。くそ。ああー、日本が離れていく。くそくそ。
たぶん、劣等感だ。コンプレックス。くそ
僕の乗った飛行機は、定刻を大分過ぎてニューデリーにあるインディラ・ガンディー国際空港に降り立った。
着陸する直前の、窓から見るインドの町並みは僕の心を締め付けた。
「ああ、おれホントやっちゃったかも知れない」純粋にそう思った。
「ああ、インドも自動車走ってるんだ」
「ああ、ビルがインドにもあるんだ」
「ああ、印度も夜景があるんだ。しょぼい夜景が・・・・」
僕の、インドに対する認識の甘さが、さらに僕を締め付けた。くそ。
着く前からインドにやられている。くそ。
降り立った、空港の入国審査は一言も交わすことなく難無く終了。
降り立った、国際空港は日本の新宿にある汚い雑居ビルを連想させる。
両替を済ませ、降り立ったインドには雨が降っていた。
僕の、インド初日は雨だった。
旅行者を出迎えるインド人の視線を掻い潜り、初めて目にするインド。
僕は、愕然とした。早くも、一泊目の日本から予約したホテルに移動するを断念しそうになる状況。
タクシーはあるが、インド人運転手だ。当たり前だが、ここはインド。日本ではない。
とりあえずバスで移動したいのだが、どれに乗ったらいいのかわからない。
書いてある行き先は、ヒンドゥー語。当たり前だが読めない。早くも日本に帰りたくなった。
手招きする、インド人爺。呼ばれるがままに。「行き先は」「コンノートプレイス」
「ああ、行くから乗れ日本人」「幾ら」「50ルピーだ」「OK」
的なやり取り。僕の英語力が中3ぐらいだったら、まともな会話になっていたんだろうが
絶命的な僕の英語力では、こんな会話じゃないかなって推測にしか過ぎないが。
50ルピー支払い、バスに乗り込む。中のインド人の白い目と白い歯で、東洋人を串刺しにする。
好奇の目で見られている僕は、インド時間の20時ということもあり慢心創痍の体には跳ね返す気力がなかった。
「ああ、もう勝手に見てくれ」「どうにでもなれ。くそ」
それでも、写真は撮ったが
たぶん、インド人ビジネスマンだろう。PCを揺れるバスの車内で器用に打つインド人。
大声で携帯電話を話すインド人。しまらない乗降口のドア。隙間風が入ってくる窓。
インド人の怒号と、唸りくるクラクションの嵐。
僕は、間違いなくインドに居た。ああ、着ちゃったインド。
今にも壊れそうなバスは、エンジン全快でぶっ飛ばす。たぶん80キロぐらい出てるんじゃ
ないだろうか?オートリクシャーと、バイクと、タクシーの洪水の道は今にも事故が
起こりそうだったが、彼らは何も気にせずエンジンの全快でぶっ飛ばす。
おかげで、座席から30センチぐらい吹っ飛ぶ。僕の、奇声を笑うインド人たち。
ああ、インド人。意外ににフレンドリーか?
大きな駅に着く。恐る恐るインド人に、「すいません。ここは、ニューデリーですか?」
「ああ、ニューデリーはもっと先だ」たぶんこんな会話。
「どっからきた韓国か?」「いや、日本だよ」「おお、いい国だな」
英語を帰国したら勉強しようとホントに、この旅で思った。
車掌のインド人に言われるがまま、とある道に降り立った。一緒に降りた日本人は
さっさっとインドの町並みに消えていった。
きっと、みんな僕と同じように他の日本人に構っている余裕なんてないんだ。
多分に漏れず、僕だって自分の事で精一杯だった。
知らない街に、分からない言葉。闇の中で見え隠れする目と、やたら白い歯のインド人。
怒号と、クラクションの洪水の町並み。間違いなく僕はインドに飲まれていた。
ああ、僕はいったいこれからどうなるんだろう?
地球の歩き方を片手に、方角も分からず闇雲に歩いてみた。
きっと、ニューデリー駅が近いって妄想の元に。
ちっぽけな勇気を振り絞って、身なりの良さそうなインド人を選んで話しかけてみた。
「すいません、ニューデリー駅か、コンノートプレイスはどこですか?」
やっぱり、僕の英語はまったく通じない。地図を見せてここに行きたいんだって身振り手振りで。
「歩いていくのか?リクシャーか?」「歩いて」「OK。じゃあ、この通りをまっすぐ行って
初めの角で右に曲がって、まっすぐ行って右に曲がって・・・・」
僕の脳みそで覚えきることは、日本海溝を巣もぐりで潜水するより難しかった。
「OKありがとう。じゃあ、行ってみるよ」
彼の指差す方向へ歩いてみた。右に曲がってみた。どうやら、すでに迷った気がした。
あぁ。1000年たっても僕の足と脳みそじゃ、たどり着く気がしなくなった。
初の、オートリクシャーで行くしかないと決断した。せざるを得なかったと言ったほうが正しい。
僕の萎えそうな勇気を最大限に振り絞り、最後の残り粕まで総動員してターバンを巻いた
インド人リクシャー運転手に話しかけた。(リクシャーってのは、3輪自動車のタクシー的な交通期間なんです)
「地図を片手にここ行きたいんだ。」「目が悪いから読めないよ」「ああ、ホテルアジャンタに行きたいんだ」
「OKアジャンタ知ってる知ってる。さあ、後ろのシートに乗りな。お前、韓国人か?」
「いや、日本人だ」「いい国だな」みたいなやり取り。多分ね
「いくらで行くんだ?」「1ダラ」「え!1ドル」「1ダラ」「ん!1ダラ」「ノー。1ダラ」
さっぱり要領を得ない僕たちの会話は、1万年と2千年平行線をたどりそうだった。
紙に書いてもらった。どうやら、100ルピー。日本円で300円。僕の体力はプライスレス。
すぐにでもベットにつっぷしなければ、明日からの朝日が迎えられそうもない糞身体。
高いのか、安いのかさえ分からないが、一刻も早くホテルで休まなければと、その行為が義務化している以上、僕は彼の奴隷だった。
「OK。レッツゴウ」言い回しが合ってるかどうかは別にして、甲高いエンジン音と共に
混乱と混沌と化した交通事情の街中に向かって走り出したリクシャー。
逆走する僕らのリクシャー、歩道を走る僕らのリクシャー、クラクションは鳴りっぱなしの僕らのリクシャー。インド人の怒号。
僕の脳は、思考を停止することを選択していたんだと思う。ギリギリのラインで。
「日本人。俺の知っているホテルがあるんだがそっちに行かないか?」
僕は、地球の歩き方の通り1泊目のホテルを、日本の代理店で予約していた。
「行かない。ホテルアジャンタに行ってくれ」「見るだけでいいんだ」
くそ。僕はリクシャーを止めて降りるそぶりを見せた。
彼は「OK。レッツゴウ、ホテルアジャンタ」
僕は、インドでやっていける気がしなくなった。
通りすがりに、「このホテルが俺の知ってるホテルだよ。」今夜のホテルがこのホテルになるとは、このときの僕は1ミクロンも知る由もなかった。
ホテルアジャンタ到着。僕は、日本でプリントアウトしたA4用紙を片手にフロントに向かった。
1階のレストランでは、欧米人が旨そうに楽しそうにディナーを食っていた。やけにうらやましく思った。
僕は、昼の機内食以来何も口にしていない。
フロントのインド人の英語は、僕にはさっぱり分からなかったが、取り合えずこの椅子に座って待っとけって事だった。なんだか良くわからんが、既に座っていたインド人女性をどかして「さあ、日本人さん此処にお掛けください」ほんと、なんだかよくは理解できなかったが
どうやら、ヘルプデスクみたいだった。手持ち無沙汰な僕は、読めもしない英語で書かれたインドのガイドブックをペラペラめくった。何もおきやしなかった。先出のインド人女性が物陰から僕を見ていた。別のインド人は「OK日本人、リラックスして待っててくれ」
やれやれ。
しばらく、周りを眺めながら待つこと15分。日本人さあ、外に出てくれ。ん?
何いってんだ?このインド人!ああ、別館とか在るのか。そうかそうか…
僕は、日本的にまだ平和簿ボケしていたって事を、この後知ることにになるが、まだこの時の僕は何もインドという国を分かっちゃいなかった。
ん?さっきのリクシャー運転手がニコニコしながら、僕を手招きする。ん?
僕は、疲れていてるからこれって妄想なんじゃないかなって思った。
ああ、これが俗に言う白昼夢か。ああ、さすがインド日本じゃできない体験ができるじゃないか!
ああ、インド、インドって、インドだよな、ああぁぁぁぁ・・・・・
僕は、言われるがままリクシャーに乗った。闇を疾走しながら、親父が話しかけてくる。僕は、半ば放心しながら
親父の言っていることなんって半分以上理解もできず、ただ頷いていた。項垂れていたって言ったほうが正しい気がする。
深夜のデリーを疾走するリクシャー。逆送する親父。飛びかう怒号とクラクションの洪水。
歩道を疾走する親父。僅か5センチの隙間で走りあっているリクシャーと自転車と車。
この国の交通事情はまさに混沌と混乱。インド人は馬鹿なんじゃないかなって思った
ああ、このまま僕は事故に合い、サンケイスポーツの最終面に3行の記事で僕の人生は終わるんじゃないかって気がした。僕の手は、手すりを力の限り握り、その手は汗ばんでいた。
気づいた時には、この親父が進めていたホテルの前に止まっていた。
にっこり笑う親父。「さあ、行こうじゃないか」僕の脳は、ストップ寸前だった。
何だこれ。地球の歩き方に書いてある感じのトラブルと似てるじゃないか。
ああ、僕はどうやら何かに嵌められている事をようやく悟った。もはや、笑うしかなかった。
僕は、ホテルを指差して、親父を見て笑った。親父も笑っていた。
僕は大きな声で「さあ、行こうぜ親父」って、言いながら元気良くホテルに入っていった。
さあ、開き直った僕は、矢が降ろうがウンコが降ろうが最早関係ない。ああ、何でもいいから早くしろ糞印度人
親父がホテルのフロントに紙片を渡す。目を細めながら見る、目つきの鋭いインド人。
「OK日本人、パスポート見してくれ」僕は、パスポートを渡しフロントに掛かってある時計と僕の腕時計を合わせた。日本時間で午前0時。やれやれ。
僕の腕時計を覗き込み、外国人特有の、あの動きをする親父。僕も釣られてあの動きをする。
「その時計いくら」「僕は、ああ100万ルピーだって」言った。日本円で300万円。まったくもって嘘だが、彼はびっくりしていた。
ああ、僕はどうやらインドに来ているらしいとこんな所で実感した。
難なく、チェックイン。笑顔で去る親父。ああ、僕はホントにインドに来ているらしい。ああぁぁ・・・
ボーイに部屋まで案内され、ワインとビールと水とチャイとトイレットペーパーを進められたが、断った。
なんかあれば呼んでくれって事だったが、絶対呼ぶかって僕はすでにインド人が嫌いになっていた。
ベッドに突っ伏する僕。とりあえず、テレヴィジョンをつけて見た。やはり、ヒンドゥー語。
ぼくは、紛れもなくインドに来ている。一人ぼっちのホテルの部屋。見知らぬ土地に来て一人になるとなんとも言い難い感情が僕を支配した。たとえ、それが嫌いなインド人が居れば、それは起こりえなかった感情だ。どうやら、僕の脳は限界を過ぎていたのかもしれない。
ただ、お腹が減りすぎていたのかもしれない。だって、昼飯らしき機内食しか食べてないから。
くそ。そんなこと考えたって外に出なきゃ何も得られないのは、わかっている。くそくそ
ぼくは、疲れた体で重い足を引きずりながら深夜のインド繰り出した。
ああ、インド。震度じゃない。印度。薄暗い町並み。クレイジィーな交通状態のカオスな街並み
砂埃と排気ガスで汚れた空気。ああ、印度。マリファナか飲酒で酩酊状態の欧米人が車に絡んでいる
ああ、印度。僕はどうなるんだろうってうなだれてみた。ああ、やるしかない。ああ、やってやるよって
ちっぽけな勇気を振り絞ってコカコーラとボトルウォーターを買った。確か35ルピー。想像より高かった
ホテルに帰り。僕は、睡眠をむさぼった。夢の中では日本のよくある日常が繰り返しリフレインしていた。
2日目に続くぜ
出発前日、壮行会いう名の飲み会を開いてもらった。プレゼントという名のやたらデカイシャア専用ザクをもらった。意外にうれしい
だが、インドには到底もって行ける筈が無い。
徹夜で作ろうかとも思ったが、帰国してから作る楽しみにし、友人に預ける
ああ、日本に帰ってきて僕はシャア専用ザクを作ることが出来るのだろうか?
そんなことを考えてみた。不毛だな
二次会で、駒込のワタミに行った。
僕は、重いバックパックとワンショルダーのバックを担いで。
ああ、これでしばらくはビールともお別れだなって、いっぱい飲んだ。
最後のビールはとても美味しかった。
さあ、時間は午前3時。僕と、3人の仲間。2人は仕事で疲れていたのだろう
深い夢の世界に入っていった。僕と、友人は、くだらない話で山手線の始発までの時間を浪費した
始発が始まる時間。僕らは駒込のワタミを後にした。やけに、寒い2月の朝。こんな朝ともしばらくはお別れだって、柄にも無く感傷的になった朝だった。
僕と友人は漫画喫茶へ向かった。僕の飛行機は、12時成田発だった。時間を浪費するためと、わずかな睡眠を貪る為に、無駄なお金を浪費した。
朝8時。無駄に疲れた体と、気だるい脳を漫画喫茶のシャワーは目覚めさせてはくれなかった。結果的に熱いシャワーを浴びることは、これが最後になってしまう結果になった。
日暮里から乗った京成スカイライナーは、僕の心をワクワクとはさせてはくれなかった。
たぶん、インドに対して恐れていたんだと思う。ちっともワクワクしない京成スカイライナーの車内で、僕は太陽と町並みを見ながら、ああ明日にはこの景色は遥か彼方になってしまうんだなってやけに感傷的になる。
きっと、彼女も旅行者だろう。パックパックとドコモのレンタル携帯。後で気づいたんだが、彼女もインドに居た。シンクロニシティーだろうか?なぜか、彼女は鼻血を出していた。
もしかしたら、インドに興奮していたんだろうか?そんなことは、僕の知る由ではなかった。
成田空港。きっと僕は初めて来た。だって、初海外旅行だからね。なんか、緊張するな。友人二人から、激励の電話。目頭が熱くなった。
デューティーフリーショップで、ウイスキー響の小瓶を買いエアインディアに乗る。
サリーを着たアテンダントは、日本のそれとは違っておばちゃんだった。
おばあさんに近いかもしれない。機内はインドの匂いがした。機内のキャビンは白いガムテープで止められていた。あぁ、僕は日本に帰ってこられるかどうかが不安になった。
くそ、インドに早くもやられてる気がした。ああ、インド人アテンダントがココナッツのスプレーを振りまいている。ああ、インド。どうなっているインド。くそ、僕はインドにいくんだろうか?やれやれ、ああ、くそ早くも空の上だ
機内食はインド食だった。くそ、辛いっちゅーねん!ぼくは、すでにインドで1ヶ月暮せる自身が早くもなくなった。機内で、第一関門の入国審査の予習をし、一人でのロールプレイング。後ろの女子大生二人組みがうらやましかった。彼女たちは、きっと英語なんてペラペラに違いない。女子大生二人組みは、日本の旅行のそれに似た楽しげな
会話を繰り広げていた。くそ。ああー、日本が離れていく。くそくそ。
たぶん、劣等感だ。コンプレックス。くそ
僕の乗った飛行機は、定刻を大分過ぎてニューデリーにあるインディラ・ガンディー国際空港に降り立った。
着陸する直前の、窓から見るインドの町並みは僕の心を締め付けた。
「ああ、おれホントやっちゃったかも知れない」純粋にそう思った。
「ああ、インドも自動車走ってるんだ」
「ああ、ビルがインドにもあるんだ」
「ああ、印度も夜景があるんだ。しょぼい夜景が・・・・」
僕の、インドに対する認識の甘さが、さらに僕を締め付けた。くそ。
着く前からインドにやられている。くそ。
降り立った、空港の入国審査は一言も交わすことなく難無く終了。
降り立った、国際空港は日本の新宿にある汚い雑居ビルを連想させる。
両替を済ませ、降り立ったインドには雨が降っていた。
僕の、インド初日は雨だった。
旅行者を出迎えるインド人の視線を掻い潜り、初めて目にするインド。
僕は、愕然とした。早くも、一泊目の日本から予約したホテルに移動するを断念しそうになる状況。
タクシーはあるが、インド人運転手だ。当たり前だが、ここはインド。日本ではない。
とりあえずバスで移動したいのだが、どれに乗ったらいいのかわからない。
書いてある行き先は、ヒンドゥー語。当たり前だが読めない。早くも日本に帰りたくなった。
手招きする、インド人爺。呼ばれるがままに。「行き先は」「コンノートプレイス」
「ああ、行くから乗れ日本人」「幾ら」「50ルピーだ」「OK」
的なやり取り。僕の英語力が中3ぐらいだったら、まともな会話になっていたんだろうが
絶命的な僕の英語力では、こんな会話じゃないかなって推測にしか過ぎないが。
50ルピー支払い、バスに乗り込む。中のインド人の白い目と白い歯で、東洋人を串刺しにする。
好奇の目で見られている僕は、インド時間の20時ということもあり慢心創痍の体には跳ね返す気力がなかった。
「ああ、もう勝手に見てくれ」「どうにでもなれ。くそ」
それでも、写真は撮ったが
たぶん、インド人ビジネスマンだろう。PCを揺れるバスの車内で器用に打つインド人。
大声で携帯電話を話すインド人。しまらない乗降口のドア。隙間風が入ってくる窓。
インド人の怒号と、唸りくるクラクションの嵐。
僕は、間違いなくインドに居た。ああ、着ちゃったインド。
今にも壊れそうなバスは、エンジン全快でぶっ飛ばす。たぶん80キロぐらい出てるんじゃ
ないだろうか?オートリクシャーと、バイクと、タクシーの洪水の道は今にも事故が
起こりそうだったが、彼らは何も気にせずエンジンの全快でぶっ飛ばす。
おかげで、座席から30センチぐらい吹っ飛ぶ。僕の、奇声を笑うインド人たち。
ああ、インド人。意外ににフレンドリーか?
大きな駅に着く。恐る恐るインド人に、「すいません。ここは、ニューデリーですか?」
「ああ、ニューデリーはもっと先だ」たぶんこんな会話。
「どっからきた韓国か?」「いや、日本だよ」「おお、いい国だな」
英語を帰国したら勉強しようとホントに、この旅で思った。
車掌のインド人に言われるがまま、とある道に降り立った。一緒に降りた日本人は
さっさっとインドの町並みに消えていった。
きっと、みんな僕と同じように他の日本人に構っている余裕なんてないんだ。
多分に漏れず、僕だって自分の事で精一杯だった。
知らない街に、分からない言葉。闇の中で見え隠れする目と、やたら白い歯のインド人。
怒号と、クラクションの洪水の町並み。間違いなく僕はインドに飲まれていた。
ああ、僕はいったいこれからどうなるんだろう?
地球の歩き方を片手に、方角も分からず闇雲に歩いてみた。
きっと、ニューデリー駅が近いって妄想の元に。
ちっぽけな勇気を振り絞って、身なりの良さそうなインド人を選んで話しかけてみた。
「すいません、ニューデリー駅か、コンノートプレイスはどこですか?」
やっぱり、僕の英語はまったく通じない。地図を見せてここに行きたいんだって身振り手振りで。
「歩いていくのか?リクシャーか?」「歩いて」「OK。じゃあ、この通りをまっすぐ行って
初めの角で右に曲がって、まっすぐ行って右に曲がって・・・・」
僕の脳みそで覚えきることは、日本海溝を巣もぐりで潜水するより難しかった。
「OKありがとう。じゃあ、行ってみるよ」
彼の指差す方向へ歩いてみた。右に曲がってみた。どうやら、すでに迷った気がした。
あぁ。1000年たっても僕の足と脳みそじゃ、たどり着く気がしなくなった。
初の、オートリクシャーで行くしかないと決断した。せざるを得なかったと言ったほうが正しい。
僕の萎えそうな勇気を最大限に振り絞り、最後の残り粕まで総動員してターバンを巻いた
インド人リクシャー運転手に話しかけた。(リクシャーってのは、3輪自動車のタクシー的な交通期間なんです)
「地図を片手にここ行きたいんだ。」「目が悪いから読めないよ」「ああ、ホテルアジャンタに行きたいんだ」
「OKアジャンタ知ってる知ってる。さあ、後ろのシートに乗りな。お前、韓国人か?」
「いや、日本人だ」「いい国だな」みたいなやり取り。多分ね
「いくらで行くんだ?」「1ダラ」「え!1ドル」「1ダラ」「ん!1ダラ」「ノー。1ダラ」
さっぱり要領を得ない僕たちの会話は、1万年と2千年平行線をたどりそうだった。
紙に書いてもらった。どうやら、100ルピー。日本円で300円。僕の体力はプライスレス。
すぐにでもベットにつっぷしなければ、明日からの朝日が迎えられそうもない糞身体。
高いのか、安いのかさえ分からないが、一刻も早くホテルで休まなければと、その行為が義務化している以上、僕は彼の奴隷だった。
「OK。レッツゴウ」言い回しが合ってるかどうかは別にして、甲高いエンジン音と共に
混乱と混沌と化した交通事情の街中に向かって走り出したリクシャー。
逆走する僕らのリクシャー、歩道を走る僕らのリクシャー、クラクションは鳴りっぱなしの僕らのリクシャー。インド人の怒号。
僕の脳は、思考を停止することを選択していたんだと思う。ギリギリのラインで。
「日本人。俺の知っているホテルがあるんだがそっちに行かないか?」
僕は、地球の歩き方の通り1泊目のホテルを、日本の代理店で予約していた。
「行かない。ホテルアジャンタに行ってくれ」「見るだけでいいんだ」
くそ。僕はリクシャーを止めて降りるそぶりを見せた。
彼は「OK。レッツゴウ、ホテルアジャンタ」
僕は、インドでやっていける気がしなくなった。
通りすがりに、「このホテルが俺の知ってるホテルだよ。」今夜のホテルがこのホテルになるとは、このときの僕は1ミクロンも知る由もなかった。
ホテルアジャンタ到着。僕は、日本でプリントアウトしたA4用紙を片手にフロントに向かった。
1階のレストランでは、欧米人が旨そうに楽しそうにディナーを食っていた。やけにうらやましく思った。
僕は、昼の機内食以来何も口にしていない。
フロントのインド人の英語は、僕にはさっぱり分からなかったが、取り合えずこの椅子に座って待っとけって事だった。なんだか良くわからんが、既に座っていたインド人女性をどかして「さあ、日本人さん此処にお掛けください」ほんと、なんだかよくは理解できなかったが
どうやら、ヘルプデスクみたいだった。手持ち無沙汰な僕は、読めもしない英語で書かれたインドのガイドブックをペラペラめくった。何もおきやしなかった。先出のインド人女性が物陰から僕を見ていた。別のインド人は「OK日本人、リラックスして待っててくれ」
やれやれ。
しばらく、周りを眺めながら待つこと15分。日本人さあ、外に出てくれ。ん?
何いってんだ?このインド人!ああ、別館とか在るのか。そうかそうか…
僕は、日本的にまだ平和簿ボケしていたって事を、この後知ることにになるが、まだこの時の僕は何もインドという国を分かっちゃいなかった。
ん?さっきのリクシャー運転手がニコニコしながら、僕を手招きする。ん?
僕は、疲れていてるからこれって妄想なんじゃないかなって思った。
ああ、これが俗に言う白昼夢か。ああ、さすがインド日本じゃできない体験ができるじゃないか!
ああ、インド、インドって、インドだよな、ああぁぁぁぁ・・・・・
僕は、言われるがままリクシャーに乗った。闇を疾走しながら、親父が話しかけてくる。僕は、半ば放心しながら
親父の言っていることなんって半分以上理解もできず、ただ頷いていた。項垂れていたって言ったほうが正しい気がする。
深夜のデリーを疾走するリクシャー。逆送する親父。飛びかう怒号とクラクションの洪水。
歩道を疾走する親父。僅か5センチの隙間で走りあっているリクシャーと自転車と車。
この国の交通事情はまさに混沌と混乱。インド人は馬鹿なんじゃないかなって思った
ああ、このまま僕は事故に合い、サンケイスポーツの最終面に3行の記事で僕の人生は終わるんじゃないかって気がした。僕の手は、手すりを力の限り握り、その手は汗ばんでいた。
気づいた時には、この親父が進めていたホテルの前に止まっていた。
にっこり笑う親父。「さあ、行こうじゃないか」僕の脳は、ストップ寸前だった。
何だこれ。地球の歩き方に書いてある感じのトラブルと似てるじゃないか。
ああ、僕はどうやら何かに嵌められている事をようやく悟った。もはや、笑うしかなかった。
僕は、ホテルを指差して、親父を見て笑った。親父も笑っていた。
僕は大きな声で「さあ、行こうぜ親父」って、言いながら元気良くホテルに入っていった。
さあ、開き直った僕は、矢が降ろうがウンコが降ろうが最早関係ない。ああ、何でもいいから早くしろ糞印度人
親父がホテルのフロントに紙片を渡す。目を細めながら見る、目つきの鋭いインド人。
「OK日本人、パスポート見してくれ」僕は、パスポートを渡しフロントに掛かってある時計と僕の腕時計を合わせた。日本時間で午前0時。やれやれ。
僕の腕時計を覗き込み、外国人特有の、あの動きをする親父。僕も釣られてあの動きをする。
「その時計いくら」「僕は、ああ100万ルピーだって」言った。日本円で300万円。まったくもって嘘だが、彼はびっくりしていた。
ああ、僕はどうやらインドに来ているらしいとこんな所で実感した。
難なく、チェックイン。笑顔で去る親父。ああ、僕はホントにインドに来ているらしい。ああぁぁ・・・
ボーイに部屋まで案内され、ワインとビールと水とチャイとトイレットペーパーを進められたが、断った。
なんかあれば呼んでくれって事だったが、絶対呼ぶかって僕はすでにインド人が嫌いになっていた。
ベッドに突っ伏する僕。とりあえず、テレヴィジョンをつけて見た。やはり、ヒンドゥー語。
ぼくは、紛れもなくインドに来ている。一人ぼっちのホテルの部屋。見知らぬ土地に来て一人になるとなんとも言い難い感情が僕を支配した。たとえ、それが嫌いなインド人が居れば、それは起こりえなかった感情だ。どうやら、僕の脳は限界を過ぎていたのかもしれない。
ただ、お腹が減りすぎていたのかもしれない。だって、昼飯らしき機内食しか食べてないから。
くそ。そんなこと考えたって外に出なきゃ何も得られないのは、わかっている。くそくそ
ぼくは、疲れた体で重い足を引きずりながら深夜のインド繰り出した。
ああ、インド。震度じゃない。印度。薄暗い町並み。クレイジィーな交通状態のカオスな街並み
砂埃と排気ガスで汚れた空気。ああ、印度。マリファナか飲酒で酩酊状態の欧米人が車に絡んでいる
ああ、印度。僕はどうなるんだろうってうなだれてみた。ああ、やるしかない。ああ、やってやるよって
ちっぽけな勇気を振り絞ってコカコーラとボトルウォーターを買った。確か35ルピー。想像より高かった
ホテルに帰り。僕は、睡眠をむさぼった。夢の中では日本のよくある日常が繰り返しリフレインしていた。
2日目に続くぜ
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